■僕の霊感
明け方に不可思議な現象が起こるようになった。2週間前には、ベッドで眠る僕の横にずっしりと何かとてつもない霊気を感じた。1週間前には手首を掴まれ、小さい子供に何処かへ行こうと急かされるように腕を引っ張られた。そして今日。

1度目はベッドに寄り添い自身の存在を示したのだろうか。とすれば、2度目はアノ世界へ行こうと手首を引いて誘ったのだろう。次は3度目である。3という数字には特別な意味が含まれおり、神話や昔話では、3人目、3個目、3回目、ことあるごとに3という数字が使われる。

僕は一週間毎にやってくる恐怖、幽霊に慄いていた。3度目には、僕の返事次第でこの世界からアノ世界へ連れ出すのかもしれない。明け方、何か小さく囁いている声が耳元に落ちた。件の返事を聞きに来たのだろう。僕は意を決し”アノ世界へは一緒に行けないのだ”と、一時 口が効けない替りに首を横に振った。一瞬間、口元に毛布が覆われた。しまった、幽霊を怒らせた。僕の返事は意味をなさない。どちらにせよ、殺してまでアノ世界へ連れ出すつもりだったのか。僕は眠ったことを悔いた。

僕は息をするために毛布を剥いだ。暁闇を背に兄弟君がニヤニヤとこちらを伺っている。兄弟君が毎週 ちょっかいを出していたらしい。幽霊ってなんだ。ああ恥ずかしい。